アーバン・モビリティ:ライドプーリングは都市と通勤をどう変えるか

13/10/2021 2020年から2021年初頭にかけて、パンデミックによる社会的距離の強制により、シェアードモビリティやライドプーリングは後手に回りました。しかし、ロックダウンが終わり人々が通勤や移動の方法を根本的に変えた今、ライドプーリングのようなシェアードモビリティソリューションはどのように成長し発展する可能性があるのでしょうか。
フォルクスワーゲンのライドシェアリングサービスであるMOIAのCEO、ロバート・ハインリッヒ氏と、Mazarsのパートナーで自動車部門共同責任者のクリスチャン・バックが、新しいモビリティが自家用車の利用をいかに追い越すか、高まる持続性への期待による影響、パートナーシップの重要性について議論します。

 

クリスチャン・バック(Mazars):私たちは、個人の自動車保有を減らし、乗り物の共有を奨励し、人々がより持続可能な移動の選択をできるようにするモビリティの世界の発展について、多くのことを読み、聞き、目にしています。「バンドルされた」使いやすい代替手段を提供することで、特定の地域や大都市での短距離移動のような特定の用途では、自家用車の所有や利用の魅力が薄れることは間違いないでしょう。自動車保険、メンテナンス、故障や事故の補償などの手間を考えると、特にそうであると考えます。最終的には、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)は、顧客にとっては利便性が向上し、企業にとっては商機が広がることを意味します。しかし、現場での進展は比較的遅いようです。

それは妥当な評価でしょうか。また、MOIAはどこに位置づけられるのでしょうか。

 

ロバート・ハインリッヒ(MOIA):シェアードモビリティは、インフラと意欲が存在しなければ、本当の意味で普及することはありません。現在、都市部での移動の大部分(約70%)は自家用車で、公共交通機関は20%程度です。MOIAでは、都市部のドライバーにライドシェアへの移行を促すサービスを提供し、都市間の移動を容易にするソリューションを提供するとともに、一人乗り車両の使用を減らすことで都市部へも積極的に貢献しています。

MOIAによるライドプーリングは、自家用車と公共交通機関の長所を組み合わせたものです。誰かがアプリで注文した移動に、他の利用者が同乗することを提供します。つまり、空席を埋めることで各移動をより効率的にすることができるのです。

ヨーロッパ市場全体を考えると、未来の移動分野に関連し、確立されたビジネスモデルはほとんどありません。MaaSはまだ初期段階にありますが、だからといって可能性に欠けているわけではありません。顧客や規制当局の立場からすると、より持続可能な社会を求める声が高まり、都市での生活や移動のあり方をより考慮する必要があるため、その重要性は高まる一方です。

 

何が進捗を遅らせているのか?

 

クリスチャン・バック:どのようなMaaSソリューションが主流となり、毎日の通勤の一部となるかを知るには、まだ時期尚早かもしれません。私はこれまで、多くの新しいモビリティが市場に出ては消えていくのを見てきました。一方、ピーク時の渋滞、駐車場の確保、環境汚染など、都市交通を利用することのデメリットは、車の所有者なら誰でも知っているでしょう。また、化石燃料の使用量削減への取り組みが強化されるため、自動車の「ステータス」は今後数十年の間に低下していく可能性が高いと言ってよいでしょう。

なぜ、代替モビリティの提案で人々を魅了することがまだ難しいのでしょうか。

 

ロバート・ハインリッヒ:私たちは日常生活に縛られ、一度決めた通勤スタイルをなかなか変えられないものです。つまり、その日、どの交通手段が一番安く、早く、便利かを確認する人はほとんどいません。私たちは日常的に同じような移動を繰り返し、数ヶ月前に決めたことを、たとえそれが最良の移動手段でなくなったとしても、変えようとは思わないのです。このような行動は、私たちの多くが交通費をどのように支払っているかによって、さらに定着しています。公共交通機関には月極めや年極めの定期券があり、自動車のリースも一定期間ごとに更新されます。これに対して、ライドプーリングのような柔軟な移動手段を提供する企業は、魅力的な価格で製品を提供し、ドライバーが日常生活を見直すように、製品を他の交通手段と「リンク」できるようにする必要があります。

 

シェアードモビリティを加速させるための政策

 

クリスチャン・バック:地方、地域、国レベルでカーシェアリングを推奨する政策があり、シェアリングカー専用の駐車場、特別営業所などがあります。その多くは、都市をより環境に配慮したものにしようという圧力に応えたものです。欧州では、自動車生産者である相手先商標製品メーカー(OEM)に対する要求も厳しくなっており、走行距離1キロメートルあたりの排出量を一定量以下に抑えること、それを守れない場合は多額の罰金を科すことなどが定められています。これに対し、OEMは新しい法規制を概ね歓迎し、環境問題に真剣に取り組んでいることを世間に示すことに熱心です。OEMメーカーにとって重要な次のステップは、自社の事業だけでなく、サプライチェーン全体をカバーする大胆なコミットメントを行うことでしょう。 

都市によって施策が異なる中、新しい交通手段を普及させるために、法律はどのような役割を果たすとお考えでしょうか。

   

ロバート・ハインリッヒ:政府は、自家用車の利用の魅力を減らし、シェアードモビリティをより便利なものにするための支援を行う必要があります。都心部の通行料徴収、歩行者のための密集地での走行制限、現在駐車場となっている場所を閉鎖し、中小企業による場所利用や公園などのオープンスペースのために転用するなど、規制は極めて重要です。

人口密度が非常に高い都市は、今日のシェアモビリティサービスが効果的に機能する可能性が最も高いです。地方自治体は、モビリティプロバイダーやアプリ開発者と協力して、自動車の優位性を制限し、シェアード車両、自転車、歩行者用通路の地位を高める必要があります。ゆっくりとした歩みかもしれませんが、人々が便利で手頃な価格で通勤できる方法を見つけると同時に、都市をより環境に優しく、住みやすくすることができれば、過去の習慣に戻そうとは思わなくなるはずです。

 

プロバイダーはパートナーシップを構築する必要がある

 

クリスチャン・バック:新しいモビリティサービスの成功には、法規制に加え、技術革新が欠かせないことが分かっています。プロバイダーは、顧客が望むものを提供するために、新しい開発の先頭に立つ必要があります。また、リアルタイムで簡単に移動ができ、長期的に環境にやさしいものにするために、継続的にデータを収集し、適用する必要があります。MOIAのようなシェアードモビリティプロバイダーは、どのようにテクノロジーに取り組んでいるのでしょうか。また、プロバイダーは他に何に注目しているのでしょうか。 

 

ロバート・ハインリッヒ:サービスプロバイダーは、予約やロジスティックの問題をカバーすると同時に、裏方の苦労を感じさせないシームレスなユーザー体験を実現する、トップクラスのユーザーフレンドリーなソリューションを開発しなければなりません。そのためには、プロバイダーが非常に高度な技術やデジタル技術を持つ人材を集め、育成する必要があります。しかし、あなたがおっしゃるように、プロバイダーはさらに先を、例えばファイナンシャル・アドバイスを提供できるチームを持つ必要があります。プロバイダーは、新しいアイデアを市場に出すための投資を常に探しているので、投資アドバイスや財務経験は常に最優先事項です。MOIAでは、この複雑な状況に対処するために、パートナーシップを最大限に活用し、他の組織と協力して相互に利益を得る方法を見つけるという方法を取っています。特にモビリティやライドプーリングの世界では、協力体制が不可欠です。例えば、家主と協力して電気自動車の充電ステーションを設置したり、スーパーマーケットや病院と提携して、乗り合い自動車が玄関先まで乗り入れられるようにしたりすることなどです。パートナーシップは、ライドプーリングやシェアードモビリティに大きな可能性を秘めています。プロバイダーは、新しいモビリティソリューションができるだけ多くの人に役立つように、独自の優れたチームの構築に目を向ける一方で、コラボレーションの機会にも目を向ける必要があります。

 

この記事は、「Reinventing the wheel: driving conversations」シリーズの一部です。その他の記事はこちらでご覧いただけます

本インタビュー内容の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先します。