アジアにおけるサステナビリティ報告: EUのイニシアティブはアジア地域におけるESG情報開示のベンチマークか

企業のサステナビリティ報告は、今や企業の評価、サプライチェーン、ビジネスモデルに影響を与える戦略的に重要な分野となっています。しかし、欧州とアジアにおける規制の枠組みのコンバージェンスが欠如していることは、透明性、報告の質、比較可能性に加えて投資や貿易といった目的の障害となるリスクとなっています。最新のサステナビリティレポートでは、EUのサステナビリティレポートの状況を日本、韓国、タイおよびシンガポールというアジアの四つの主要な国との比較について理解を深めることを目的としています。

また、ESG報告の枠組みをEU及びアジアを代表する国を比較することで、本レポートが規制当局、ビジネスリーダー、投資家、およびその他の関心を持つステークホルダーがEUの経験について深く理解し、さまざまなサステナビリティ報告のアプローチの障害と機会について、広範に理解を高めています。

ESGの展望を形成する発展:何がアジェンダを推進しているのか?

ESG報告の枠組みは、国ごとおよび国際的に複数存在し、「同等性」 または 「コンバージェンス」は、最重要課題としており、多くの規制当局は、国内企業の世界的な競争力に対する懸念に対処し、国際的に活動する企業に対する重複しかつ過度に複雑な要求の負担を管理することを目指しています。EUおよびアジアにおけるサステナビリティレポート状況の概観でいうと、最近の動向により、どのようにアジェンダが推進されていて、クオリティーコーポレートESGデータの可能性を象られていることを策定することができます。どの国が「義務」であり、「任意」、「順守または説明」ベースで運営されているのか、また、どのような変化が起きているのかをご覧いただけます。

「利用可能なデータを増やすことは最優先事項です。一定レベルのデータがない限り、商業施設や機関投資家は、セクターの弱点やサステイナビリティリスクを気候変動のように判断がしがたいと言えます。」池田賢志

 

ステークホルダーの理解:持続可能なPAAに資本を誘導するための鍵

持続可能なプロジェクト、活動、資産(PAAs)に資本を振り向けるためには、まず主要な経済的ステークホルダー、特に大企業や金融機関の持続可能性のリスクと影響について正しい理解を得ることが最も重要です。このレポートでは、国際的な投資家のサステナビリティ・データへの期待に応えるために、アジアの規制当局、企業、金融機関のステークホルダーが適切な対応を行うための課題として、EUとアジアの専門家による文脈上のインサイトと展望を提供しています。また、複雑な国内経済の現実を考慮する必要があります。サステナビリティ・データに対する期待や複雑な国内経済の現実が、どのような影響を及ぼしているのかをご参照いただけます。

「サステナビリティ事項と各企業の長期戦略やビジネスモデルとの結びつきが明快に開示されれば、極めて有益な情報となる。そして、サステナビリティ事項と各企業の長期戦略やビジネスモデルの結びつきのあり方は、各企業にとって異なりうるものである。従って、開示内容についても独自性や多様性が生じて然るべきものである。」森洋一

 

ESG報告における世界のフロントランナー:EUは雛形を提供するか?

EUによるアプローチの変化および最近のダブル・マテリアリティへの修正ならびに環境保護活動の共通タクソノミーの確立が、どのようにアジアの立法府および政策立案者の間でのEUの計画に対する受入れの度合いを徐々に変えてきているかの事例を調査することによる、EUのサステナビリティレポート・イニシアティブの置換可能性の評価。EUによるアプローチの変化およびEUの規則は、アジア諸国の経済が天然資源や化石燃料に大きく依存していることや、多くのアジア諸国が新興国であることを十分に考慮に入れていないため、多くのアジア諸国においては厳格すぎる規則と見なされています。レポーティング関連の規定の中で、最も支持されている理由はどこにあるのか、こちらのレポートにてご確認いただけます。

「欧州のアプローチは世界的な需要に適合しているとは思えません。 多くの国・地域にとっては、粒度が大きすぎ、細かすぎ、野心的すぎる。グローバルな観点からは、ISSBとGRIの2本柱のアプローチ(それぞれ財務的重要性と影響度重要性を表す)がより有望である。」アレクサンダー・バッセン

このレポートでは、サステナビリティレポートのフレームワークと主要な報告義務の厳しさを国・地域ごとにマッピングすることで、対象国・地域の現在の野心レベルを特定するのに役立つ比較報告ベンチマークを確立する方法をご紹介しています。

 

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Dr.キム・シューマッハ

九州大学でサステイナブル・ファイナンスとESGの准教授として参画。最近まで東京工業大学の講師を務め、日本初のサステイナブル・ファイナンスの大学院レベルのコースを創設、指導してきた。以前、オックスフォード大学で博士研究員として勤務。また、ルクセンブルク最大の金融機関であるSpuerkeessのLead Science and Sustainability Advisorおよび科学諮問委員会の議長も務める。GRIのサステナビリティ基準委員会(GSSB)、ISOの持続可能な金融と環境マネジメントに関する技術委員会のメンバーでもある。カリフォルニア大学バークレー校で修士号、リール大学で学士号を取得後、東京大学で環境科学の博士号を取得。