収益認識の開示(表示・注記):(4) 日本基準によるIFRS任意適用企業の注記事例分析①

2022-03-18

 (1)の「【相違点2】従来の開示実務との違い」で解説したとおり、収益認識基準では、「開示目的」(基準80-4)という考え方が導入されているため、従来の開示実務からの発想の転換が必要です。

 従来の開示実務では、法令等に基づいて「最低限のチェックリスト」的に対応する場合が多く、個別の開示項目に関する他社事例の網羅的な収集や、開示の全体傾向の分析が有効であったと思います。

 一方、収益認識基準の開示では、自社グループの収益認識の特徴や不確実性を明らかにしたうえで、何をどのように開示するか企業が判断して対応する必要があります。

 この前提に立てば、事例をたくさん収集して開示項目ごとに紹介したり傾向を分析したりするだけでなく、特定の企業の注記事例について、企業が根拠とした基準等の定めや実施した判断を推察することも、読者の実務の参考にしていただけるのではないかと考えました。

 そのような趣旨で、「収益認識に関する期末注記のポイント~IFRS注記事例の分析を踏まえて~第1回」を寄稿しました(税務研究会「週刊経営財務」2022.3.28 No.3549 掲載予定)。

 

 日本基準によるIFRS注記事例分析は、有価証券報告書からの関連部分の抜粋について、(1)日本基準への読み替え、(2)注記項目の内容分析、(3)注記項目相互の関係分析、(4)その他の開示項目との関係分析、そして(5)分析からの気づきの順序で実施します。

 

 初回は、収益認識の期末注記を検討するうえでの全般的な「気づき」が得られる事例です。また、その「気づき」は、多くの企業に当てはまる普遍的なものあり、基準適用の準備期や初年度だけでなく、企業が存続する限り有用なものであると思われます。